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エメラルドの島 アイルランド

ヨーロッパの北西端にあるアイルランド島。
そこにはかつてヨーロッパを席巻したケルト民族の末裔が住み、
自然を崇拝し、吟遊詩人たちによる口承文化で受け継がれて来た独自の感性は、
豊かな文化、伝説や物語、音楽を生み、今尚世界中の人々を魅了し続けます。

アイルランド伝統音楽は、隣国イングランドからの長い支配や大量移民などの歴史の中で育まれたものが多く、
シャーン・ノスと呼ばれる唱法で歌われる伝統歌のほか、
厳しい生活の中で唯一の楽しみとして踊られたダンスから、数多くのダンス音楽が生み出されてきました。

Mermaid 人魚

アルタンの演奏でも知られるこの曲は、アイルランドに伝わる「人魚伝説」がモチーフになっているアイルランド民謡です。
日本の羽衣伝説ととてもよく似ており、遠い国なのに、同じようなストーリーの民話が存在することが不思議に思えます。
民話のストーリーはこちら「人魚のおはなし」


「お母さん、元気がなく悩んでいるみたいね」
河口には雪が降り注ぐころ
「お母さんは髪が金色で、口元は穏やか」
ほら、メアリ・ヒニがエールネ湖を泳いでくる

     (1番歌詞、Micheal菱川さんの訳より)
帰ってきたジョニー
   
1603年アルスター制圧後、アイルランドは、イングランドの植民地となります。
イングランドの支配下、アイルランドの多くの若者が、海を越え戦場へと駆り出されて行きました。

アイルランド民謡「あのジョニーはもういない」JOHNNY I HARDLY KNEW YE を元に作ったオリジナル曲です。
「あのジョニーはもういない」は南北戦争時に歌われたという有名なアメリカ民謡、「ジョニーの凱旋」WHEN JOHNNY COMES MARCHING HOMEのアイルランド版とも言われますが、曲の内容は正反対。
アメリカ版「ジョニーの凱旋」の内容は勝利の行進曲となっており、町中がジョニーら兵達の勝利の帰還に沸き立ち、鐘をならして歓迎するという内容で、アメリカ映画のBGMにも度々使われてきました。
しかしこのアイルランド版では、戦争で不具となり、変わり果てた姿で帰ってきたジョニーを迎えた母親が、涙ながらに歌うという内容となっています。
全く正反対の運命を辿ったふたりのジョニー。本当の姿は、どちらだったのでしょうか。。。
ダルトン・トランボ監督「ジョニーは戦場に行った」という映画は、このアイルランド版を元に作られた反戦映画として有名です。

 
          たどり着いた 懐かしいふるさと
          遥かな空 緑の大地よ
          夢に見た 家族に会える日を
          ようやく会える 母さんはどこ?

          共に旅立った 仲間はもういない
          たくさんの願いは絶たれた

          手には杖を握りしめ
          目には涙が溢れ

          そのときひとりの
          悲しい声を聞いた・・・

                 *

        争いが今始まり
        あなたは銃を手にした
        敵がすぐそばに迫り
        あなたは変わり果てた

            やさしかった瞳は 
            どこへ行ってしまったの?
            なぜ、母と子を置いて
            遠くへ行ってしまったの?


        あなたの足はどこへ行ったの?
        力強く走っていた
        幸せだった懐かしい日々は
        もう二度と帰らない

            手も足も奪われ
            代わり果ててしまった
            でも(けれど) これでもう誰も
            おまえを奪えはしない


        「争いが今始まり
        あなたは銃を手にした
        敵がすぐそばに迫り
        あなたは変わり果てた」


            また 人は銃を持ち
            争いは繰り返す
            でも(けれど) これでもう誰も
            おまえを奪えはしない

            私からもう二度と
            おまえを奪えはしない

A Stór Mo Chroí ア・ストァ・モ・クリー
   
1840年代、唯一の食料だったジャガイモが疫病により大不作となり、たくさんの人々が餓死や病死・・・人口は800万から440万までに減る大飢饉が起こりました。
200万人以上の人々がアメリカ大陸などへ移民し、家族も恋人も離れ離れになりました。
この曲をはじめ、愛する人への二度と会えない悲しみの思いを歌った曲がたくさん残されています。
"A Stór Mo Chroí" は "darling of my heart." という意味です。

 
A Stór Mo Chroí, when you're far away
Far from the land you'll be leaving,
It's many a time by night and by day
That your heart will be sorely grieving.
For the stranger's land may be bright and fair,
And rich in its treasures golden.
But you'll pine, I know, for the long, long ago
And the love that is never olden.

A Stór Mo Chroí, in the stranger's land
There is plenty of wealth and wailing.
Whilst gems adorn the great and the grand
There are faces with hunger pailing.
Though the road is toilsome, and hard to tread
And the lights of their cities will blind you.
Won't you turn a stór to Erin's shore
And the ones that you're leaving behind you.

A Stór Mo Chroí, when the evening's mist
Over mountain and sea is falling,
won't you turn away from the throng
And maybe you'll hear me calling.
For the sound of a voice that is surely missed
For somebody's quick returning.
A ruin, a ruin, oh won't you come back soon
To the ones who will always love you.


あなたが遥か遠くに居る時 
あなたはまもなく故郷を離れる
夜も昼も、何度も、あなたの心は悲しみに打ちひしがれるでしょう
異邦の地は、輝かしく美しく、
黄金の宝物に溢れているかもしれません
けれども、きっと故郷に焦がれるでしょう
その愛情が古くなることは決してありません

異邦の地には、富と嘆きで溢れています
宝石に飾られた偉い方も、飢えて青ざめている人々もいるでしょう
道が険しく、通り難い時
都会の光があなたの目をくらます時
愛しいエリン(アイルランド)の岸辺と
後に残してきた者へと、どうか振り向いてください

山、海の上の夕方の霧が霞んで行く時
どうか振り向いてください
あなたにも、私の呼ぶ声が届くかもしれません
あなたの帰りを願うその声を
早く、早く、戻ってきてください
いつも変わらずにあなたを愛している者のもとへと
Siúil A Rúin シューラ・ルゥ
   
宗教改命が激しく行われた 17 世紀、カトリック系のアイルランドはプロテスタントのイングランドと対立していました。
覇権を巡って戦ったボイン川の戦いで最後まで勇敢に戦い活躍したアイルランド将兵は「ワイルド・ギース(野生の雁)」と呼ばれ、敗戦後、イギリス国王への忠誠を拒否してフランスへ渡り、18世紀のフランス軍で誉れ高いアイルランド連隊として戦いに参加しました。

Siúil A Rúin で歌われる恋人は、この「ワイルド・ギース」として海を渡った傭兵だと言われています。
Peter, Paul & Mary の 1963 年のヒット曲「Gone The Rainbow (虹と共に消えた恋)」の原曲としても有名です。

I wish I was on yonder hill
'Tis there I'd sit and cry my fill
And every tear would turn a mill
Is go dté tú mo mhuirnín slán

<Chorus>
Siúil, siúil, siúil a rúin
Siúil go socair agus siúil go ciúin
Siúil go doras agus éalaigh liom
Is go dté tú mo mhúirnín slán

I'll sell my rock, I'll sell my reel
I'll sell my only spinning wheel
To buy my love a sword of steel
Is go dté tú mo mhúirnín slán

I'll dye my petticoats, I'll dye them red
And round the port I'll beg my bread
Until my parents shall wish me dead
Is go dté tú mo mhúirnín slán

I wish, I wish, I wish in vain
I wish I had my heart again
And vainly think I'd not complain
Is go dté tú mo mhúirnín slán

はるか遠くの丘に行き
気が済むまで泣きたいの
涙で水車が回るほどに

(コーラス)
どうかそっと来てちょうだい、愛しい人
そっと、静かに、来てちょうだい
そのドアからそっと来て、わたしを連れ出して
どうかご無事でありますように・・・

宝石も糸巻きも売り払いましょう
たった一つの糸車さえも
あなたに鉄の剣を買うために

私はペティコートを真っ赤に染めて
世界中を物乞いしながら歩きましょう
たとえ親に呪われようとも

望んでも、望んでも、望んでも、ただ虚しい
私は心を取り戻したいだけ
他には何も望みはしない
Down By The Salley Gardens 月の庭 
   
アイルランドに伝わる民謡で、アイルランドの詩人、W.B.Yeatsが1889年にアイルランドの老婆が歌っていた断片から採詞し詩集で発表しました。
Salleyとはアイルランド語で柳を意味する"saileách"から来たと考えられています。
シャナヒーでは、佐々木由紀さんの日本語の詞にのせて演奏し、1stCDのタイトル曲となっています。

It was down by the Sally Gardens, my love and I did meet.
She crossed the Sally Gardens with little snow-white feet.
She bid me take love easy, as the leaves grow on the tree,
But I was young and foolish, and with her did not agree.

In a field down by the river, my love and I did stand
And on my leaning shoulder, she laid her snow-white hand.
She bid me take life easy , as the grass grows on the weirs
But I was young and foolish, and now am full of tears.

柳の庭で、 僕と彼女は出会った
彼女は、雪白のような細い足で歩み、僕に言った
「恋なんて気楽なものよ 葉が樹に茂るようにね」
だけど僕はまだ若くて愚かで、その言葉に頷けなかった

川のほとりに、僕と彼女は佇んでいた
彼女は僕の肩に、白雪のような手を差し伸べた
「気楽に生きればいい 草が川堰に茂るようにね」
だけど僕はまだ若くて愚かで・・・今はただ涙にくれるばかり



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